アニメだけじゃない!昔から日本にいた妖怪の伝説を紹介!

今でこそ知られたぬり壁は実はまだ新しく知名度の低かった妖怪!

ある夜道を歩いていて、ふと気付くと目の前に見えない壁にぶつかったかのように前に進むことができなくなってしまった。右だろうと左だろうと回り道もできない。とにかく前へ進むことができなくなった。

そんな時は妖怪「ぬり壁」の仕業と言われています。一服したり棒で下の方を払うと消えるとされています。

妖怪のアニメ(漫画原作)の主要キャラクターとして活躍して一躍有名になった妖怪のひとりですが、初出はまだ最近と言えます。昭和初期の頃の民芸学者、柳田國男が書いた本にぬり壁の記載があります。

元々、福岡県の海岸地方に出る妖怪とされています。大分県では、地域によって「狸の塗り壁」「イタチの塗り壁」などが伝わっています。また、小豆洗いと一緒に出没するという話もあります。

九州方面の妖怪ですが、先に触れた通りアニメにより全国に知られるようになりました。それ以前は、無名の妖怪だったと言っていいでしょう。ただ、九州地方の妖怪ではあるのですが、似たような妖怪は他の地域でも伝えられています。

例えば、高知県の「野襖(のぶすま)」です。壁ではなく襖(ふすま)が壁のようになって、やはり進めなくなるそうです。左右に移動しても壁になった襖が続き、野襖だと気付くと気絶してしまうそうです。対策はぬり壁と同じように、一旦落ちついていると自然に消えるそうです。

岐阜・福井県では、似たような感じで襖らしいのですが、どうやら狸が襖になるようです。

熊本県では、「壁塗り」になります。夜の道に黒い壁が現れるとなっています。言い方は違いますが、ぬり壁と同じような妖怪と言えそうです。同じように壁塗りが大分県にもあり、そこではかべ塗りは有名だそうです。

長崎県では、「塗坊(ぬりぼう)」と言いますが、ぬり壁と同系統の妖怪と言えそうです。ただ、ぬり壁よりも形ははっきりしないのですが、やはり夜の山道で何かしらが突然つき出てきて前に進めなくなるそうです。対応もぬり壁同様です。

鹿児島県の「シマーブー」もやはり道を塞ぐ妖怪だそうです。

「道塞ぎ(みちふさぎ)」は、新潟県と長野県の県境で出ました。これは、壁ではなく大滝と大岩が現れて身動きできなくなったという報告です。昭和30年代の頃という、まだ最近の話です。

ぬり壁を広めたアニメの原作漫画の作者も、ぬり壁の存在を自身で経験しています。これは、第二次世界大戦中の南方での出来事だそうなので、海外での話になります。

本人が遭遇した内容としては、やはり森の中を夜歩いていたら突然前に進めなくなったという話です。戦時中で敵もいる状況でかなり焦ったようですが、どうしようもなくなって一旦休憩したら、その壁は消えたそうです。

実は、このぬり壁ですが、新しい妖怪としての認識だったのが覆る出来事がありました。

と言うのは、それまで初出が先に触れたように柳田國男によるものだと思われていたのですが、室町時代に書かれた妖怪画にぬり壁があったと言う発見があったのです。

元々その妖怪画には名前の記載がなかったのですが、最近になってアメリカにある妖怪画と同じ絵で、しかもアメリカに渡った方の妖怪画には「ぬり壁」との名前の記載があったことからわかったそうです。

しかしそのぬり壁は、眼が三つある大きな犬のような獅子のような姿をしているため、みんなに広く伝わったぬり壁と同一の妖怪だと言う断言はされていません。絵だけだと判断が難しいのでしょう。

どの姿が本当のぬり壁の姿かはわからないのですが、もしある日夜道に前に進めなくなったらそれはぬり壁です。落ちついて対処しましょう。